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月別アーカイブ: 2025年4月

第10回プラント工事雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社巧工業の中西です。

 

 

さて今回は

~設計~

ということで、プラント工事における設計について、以下の5つの観点から深く掘り下げて解説します。

 

安全・効率・将来性を支える「産業の骨格」づくり

プラント建設とは、単なる設備導入や配管敷設の集合体ではなく、プロセス、構造、設備、電気、計装、法規、安全、環境対策までを統合した「産業のインフラ構築」です。

中でも「設計」は、工事全体の方向性・完成度・操業後の生産性を左右する最重要フェーズ。誤った設計は、施工トラブル・運用ミス・事故・法令違反の原因となります。


 1. プラント設計の基本構造:5つの設計領域

プラント設計は大きく分けて以下の5領域に分類され、それぞれが密接に連携します

項目 内容
プロセス設計 化学・食品などの生産フロー(流体・反応・熱処理等)
配管設計(Piping) 流体の経路設計(圧力、口径、材質、勾配)
構造設計(Civil) 建屋・基礎・鉄骨・耐震設計
電気・計装設計(E&I) 電源系統、制御盤、センサー、PLC、DCS等
ユーティリティ設計 水・エア・蒸気・窒素・排気などの補助系統

設計はこれらをシステムとして統合的に構築するものであり、「部分最適」ではなく「全体最適」が求められます。


2. プロセス・配管設計:安全・効率を決める“心臓部”

 プロセスフローの設計(PFD / P&ID)

  • PFD(Process Flow Diagram):プロセス全体の物質・エネルギーの流れ

  • P&ID(Piping & Instrumentation Diagram):バルブ、配管、制御装置など詳細情報

要点

  • 圧力・温度・流量の設計条件

  • バッチ or 連続運転の違い

  • 安全弁、ブローオフ、逆止弁などの配置検討

  • 薬品・ガスの性質に応じた配管材質とシール方式の選定

配管レイアウトの設計

  • 動線・作業性・メンテナンス性を考慮した三次元ルート設計

  • 支持金具・伸縮対策(熱膨張)・振動対策の導入

  • ドレンライン、ベントライン、空気抜き・洗浄配管の確保

 大型プラントでは、3D CAD(Plant 3D, PDMSなど)によるモデル化と干渉チェック(クラクラッシュチェック)が必須です。


 3. 土建・構造設計:安全性とメンテナンス性を支える“骨格”

基礎・建屋設計のポイント

  • 地耐力に応じた基礎形式(独立基礎、杭基礎、マット基礎)

  • 機械の動荷重・振動・温度変化に耐える設計

  • 耐震性能(構造計算+免震・制震装置)

点検通路・作業足場の設計

  • 設備間の人間工学的距離(800mm以上)

  • 高所での点検用ステージ・階段・手すり

  • メンテナンス機器の搬入経路・吊り上げ荷重の想定


 4. 電気・計装設計:制御と見える化の中枢

 電気設計の要点

  • 電源容量(高圧/低圧)、ブレーカ選定、保護協調設計

  • 照明・避雷・非常電源(UPS/発電機)の確保

  • 防爆エリアでは電気機器の規格適合(Exd、Exeなど)

 計装(I&C)設計のポイント

  • センサー(圧力・温度・流量・pH等)の配置と仕様

  • 制御方式(PLC, DCS, SCADA)と通信プロトコルの整合

  • アラーム・インターロックの設計によるフェイルセーフ性

現代のプラントでは、デジタルツインや遠隔監視(IoT)との連携設計も重要です。


5. 法令・環境・安全設計:規制順守と持続可能性

主な関連法令と設計対応

法令 対応内容
建築基準法 構造・用途・建築確認
消防法 危険物・防火区画・避難経路
労働安全衛生法 設備の高さ・作業動線・足場設計
高圧ガス保安法 ガス設備・貯蔵・配管材質
水質汚濁防止法・大気汚染防止法 排水・排ガスの処理系設計

 環境負荷低減と省エネ設計

  • 熱回収(ヒートエクスチェンジャー)

  • 高効率モーター・インバーターの導入

  • 廃液・排気の再利用(ゼロエミッション設計)


プラント設計は「産業のインフラ×安全の設計学」

プラント設計は、単なる図面や構造設計ではなく、
「生産性 × 安全性 × 法令順守 × 維持性 × 環境性」を統合した、システム工学と実務知見の結晶です。

設計段階の精度が、そのまま工事のトラブル率、操業時の稼働率、設備の寿命、そして法的信頼性に直結します。


設計で押さえるべき5つのキーワード

キーワード 内容
全体最適 各設計領域を統合的に最適化する力
メンテナンス性 点検・交換・保守がしやすい設計
安全・法令順守 危険予知とリスク評価に基づく設計
環境配慮 排出・省エネ・再利用への対応
柔軟性 将来の増設・改修への拡張性の確保

 

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第9回プラント工事雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社巧工業の中西です。

 

 

さて今回は

~確認事項~

ということで、プラント工事における事前確認事項を「5つの観点」で深く掘り下げ、現場・設計・管理者すべての立場に役立つ実務ガイドとしてまとめました。

 

プラント工事、それは単なる建設作業ではなく、多くの技術分野が絡み合う超複合的プロジェクトです。化学、製薬、エネルギー、食品、鉄鋼など、各業種に応じて異なる要件があり、事前準備が成否を大きく左右します

誤った設計や確認漏れは、工程の遅延、コスト増、安全事故、品質不良といった重大なリスクに直結します。


1.  設計・図面関連の事前確認

 設計図面・仕様書の整合性チェック

  • 配置図、P&ID、配管レイアウト図、電気計装図、土建図の相互整合性

  • 他工事区分との設計干渉(クラッシュ)がないか

  • 使用機器の型番、サイズ、仕様、容量が発注機器と一致しているか

 ポイント
設計変更が繰り返されている場合は、改訂番号や履歴管理(REV管理)も忘れずに。


2. 現地環境・施工条件の事前確認

現地調査と施工環境の把握

  • 搬入経路、クレーン可動域、足場の設置可能範囲

  • 電源・水・エアの仮設供給体制

  • 作業スペースの確保(高所・狭所・防爆エリア等)

地盤・基礎条件

  • 地耐力、アンカー設置位置の確認

  • 埋設物や既存配管との干渉チェック

工事初日に「搬入ができない」「既設配管と干渉」などが判明すると大きな損失となるため、事前の現地立会と寸法確認は必須です。


3.  工程・施工体制の事前確認

 工程表(ガントチャート)の精査

  • クリティカルパス(CP)の把握と工期遅延リスクの洗い出し

  • 機器納期・資材搬入・作業工程の連携確認

  • 多業種(電気・配管・土建・塗装など)との工程調整

作業員の手配とスキルマッチ

  • 特別教育・技能講習修了者の配置(酸欠、玉掛け、高所作業、溶接等)

  • 外国人作業員の通訳体制や安全教育の整備

  • 作業班ごとの日報・指示系統の確立

ポイント
リスクアセスメントやKY活動が形骸化しないよう、事前に手順書を共有し、実地訓練(プレ工事)を実施するのが効果的です。


4.  品質・資材・設備の確認

 使用材料・機器の確認

  • 材料ミルシート、検査成績書、仕様書のチェック

  • 配管材料、フランジ、ガスケット、バルブ類の納期・型番

  • 防爆仕様やクリーン対応が必要な機器の適合性

 試験・検査の準備

  • 圧力試験、水張試験、リークテストの試験手順・準備物

  • 管内フラッシングやプレクリーニングの方法

  • 引渡し検査時の検査項目・帳票・立ち会い者の確認

検査に関わるトラブル(記録不備・未実施項目など)は最終検収での手戻りリスクが高いため、設計段階からチェックリスト化しておくことが有効です。


5.  安全・法令・申請関連の確認

 法的な申請・届出

  • 労働安全衛生法(高所・クレーン・有機溶剤)

  • 消防法(可燃物・防爆対応)

  • 建築基準法(増築・構造補強)

  • 高圧ガス保安法、電気事業法

安全対策の事前検討

  • 足場計画、防火対策、火気使用届、避難経路の確保

  • 作業員の安全帯・ヘルメット・PPEの規格適合

  • 危険区域の立入禁止処置、パトロール体制

ポイント
行政申請や消防検査は数週間〜数か月かかるケースもあるため、事前スケジュールに余裕を持つことが不可欠です。


プラント工事の成功は“事前の確認と調整”にあり

プラント工事は、多くの工程・資材・人が関わる「時間と空間の複雑なパズル」です。そのすべてを確実に動かすためには、工事開始前の準備・確認が最大の成功要因となります。


事前確認チェックリスト

分類 チェック項目
設計 図面整合性、仕様書の一致、設計変更履歴
現地 測量、搬入経路、施工スペース、地中配管
工程 工期、作業重複、職種連携
資材 納期、型番、仕様、検査項目
安全 法令対応、届出書類、安全教育

 

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